「智力を尽くして生きるを支える」

この言葉は、私が訪問看護事業のブランディングに携わった際に生まれたものです。現場の看護師やセラピストたちが、利用者様やご家族の「生きる力」を支えるために、日々、「智の力」を尽くして向き合っている姿を目の当たりにして生まれた言葉でした。

それは単なるキャッチコピーではなく、働く人たちの姿勢や価値観を象徴する「行動指針」でもあります。目の前の人に寄り添いながらも、知識や科学的根拠、経験や人間性等を総動員して支える。そのプロフェッショナルなあり方を言語化したのが、このフレーズなのです。

愛する父を失う喪失体験を経て思うこと

昨年、愛する父が他界し、突然の別れではなかったものの、その喪失感は大きく、今だに心の奥底にぽっかりと穴が空いたような感覚があります。そして、父との別れの中で改めて「智力」の大切さを実感しました。

もともと私は、「智力を尽くして生きるを支える」というフレーズを、訪問看護や医療の現場に関わる中で生み出しました。目の前の人の人生を支えるために、専門職の知識や経験、判断力を総動員して最善を尽くす――そんな想いを込めた言葉です。ですが父の死を経験して、私はこの言葉の重要性を改めて実感しました。

父の病気が進行し、入院生活が始まると、私たち家族は数多くの選択を迫られました。延命治療の是非やどこまで医療行為を行うのか、自宅療養か病院か…。

私は医療職ですが、父と別れるには時間が足りなさすぎて、「お別れする時間が欲しい。そのために、1日でも長く生きて欲しい。」と思っていました。こうした中で、医師や看護師等の専門職の方々が状況を整理し、私たち家族の想いを汲み取りながら冷静に選択肢を示してくれました。

このとき私が感じたのが「智の力」です。智力とは、単なる知識や技術ではなく、

  • 状況を的確に見極める力
  • 未来を見据えて判断をする力
  • 相手の価値観や想いを尊重しながら最適解を導く力

を兼ね備えた力なのだと思います。専門職にこの智力があったからこそ、父は最期まで穏やかで尊厳のある時間を過ごすことができたのだと思います。関わってくださった先生や看護師さんには、とても感謝しています。

言葉の力を守り、広げていく使命

「智力を尽くして生きるを支える」という言葉は、現場で働く人たちの誇りを表すものです。この言葉の力を守ることは、私たちにとって単なる知的財産の問題ではなく、医療・看護という仕事の価値を守る行為であり、アイデンティティを守る行為と言えます。一方で、利用者様やご家族にとっては、安心して在宅で生活をすることができる価値でもあります。

この言葉に愛着を持ち専門職として絶対に譲れない精神を大切にし、この言葉を大切にしてくれる仲間たちと共に、組織を作り上げていく土台にしたいと思います。私はこれからも、このフレーズの本当の意味を伝え続けていきたいと思います。そして、関わる人の「智力」を尽くして生きることを支えられる社会を、少しずつでも広げていきたいと思います。

この記事を書いた人

メティス訪問看護ステーション

私たちは病気や障害があっても人生を 「より良く生ききる」 ことをあきらめなくても良い社会の実現に挑戦しています。
私たちは希望する生活や人生をより良く生ききるサポートをします。
そのために私たちは「智力を尽くして、生きるを支える」 をモットーに、 利用者様の人生に寄り添う「人間性」と利用者様の病態や障がいに向き合う「専門性」を兼ね備えた専門職業人で在れるように、内省や自己研鑽に励み エキスパートを目指します。