今日は、最近の論文の中でも特に衝撃を受けた医学研究をご紹介します。

『Nature 』という有名な科学雑誌に掲載された研究に、衝撃的な研究が掲載されており、震えました。なんと、「冬に妊娠していたお母さんから生まれた子どもは、褐色脂肪の活動が活発になる可能性がある」というのです。

出典

Nature Metabolism: People conceived in colder seasons may see higher brown adipose tissue activity

適応能力のバタフライエフェクト

気候の変化などにより、身体が環境に適応するために生理機能を変化させることは、「恒常性(ホメオスタシス)」や「生理的適応(physiological adaptation)」と呼ばれます。その生理機能の変化が、お腹の子の生理機能に影響を及ぼすことも同じく生理的適応です。ですが、エピジェネティクス的な反応でもあるのではないかと思います。エピジェネティクスとは、DNAの配列(文字列)は変わらないのに、遺伝子のスイッチ(ON/OFF)が環境によって変化する仕組みのことです。お母さんが受けた環境ストレスが、お腹の子の遺伝子発現に影響するということがあります。そしてその遺伝子発現は、環境に適応した個体が生き残りやすく、子孫を残しやすくなるという自然選択という進化の形態をとるきっかけになります。

気候の変化は母体の生理機能を変化させ、胎児の生理機能に影響し、生まれた子どもは成長し、次世代へ影響を及ぼしこの流れが集団全体の遺伝的傾向にまで発展したら、進化につながり、この流れは、適応能力のバタフライエフェクトと言える気がします。生理学や代謝学の研究者の先生方は、そう簡単なことじゃないと言うと思いますが…。

今日の復習

褐色脂肪細胞が直接原因となる疾患は多くないため、褐色脂肪細胞は言葉だけ覚えているという医療職の方も多いのではないかと思います。

脂肪細胞は大別すると、「白色脂肪」と「褐色脂肪」に分けられます。アディポネクチンやレプチンなどのアディポカインを分泌し、食欲やエネルギー代謝を調節しています。

白色脂肪は、代謝活性が低く単に脂肪を貯蔵するだけの器官と考えられてきましたが、最近は内分泌器官との認識になっています。ペプチドホルモンであるレプチンは、視床下部の受容体に作用して食欲の抑制と熱産生の増加を引き起こし、体重コントロール機能を担っています。レプチンやレプチン受容体の欠損した動物では肥満が起こるらしいです。怖いですね~。

一方、褐色脂肪は、ほとんどすべての哺乳類の新生児期に存在する、非ふるえ熱産生の主要臓器です。大型の哺乳類では、成長すると消失されるらしいです。人でも新生児期や幼児期には明確に確認できますが、成人では鎖骨部や脊柱に沿って存在しています。褐色脂肪には交感神経節後線維が蜜に分布し、細胞にミトコンドリアが豊富に存在し熱生産能が高い細胞といえます。褐色脂肪細胞の機能低下がおこると、肥満になります。怖いですね~。

つまり、簡単にまとめると、以下のことがいえます。

白色脂肪:エネルギーを蓄える役割。いわゆる“太る脂肪”はこちら。食欲抑制ホルモンを分泌し、体重コントロールしようとする。

褐色脂肪:エネルギーを熱に変える働きを持ち、代謝を活発にする“燃える脂肪”。

褐色脂肪が多く活動的だと、体は自然とカロリーを燃やしてくれる!!

参考文献

標準生理学

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メティス訪問看護ステーション

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