在宅医療は専門性だけでは通用しない
高度急性期などの医療の現場では、「専門分野に特化すること」がキャリアの王道です。また、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として認定看護師を目指すこともスペシャリストを目指すことになるでしょう。
ところが、在宅医療の現場では、地域や在宅というフィールドに出ると、“専門分野だけでは解けない複合的な課題”に直面します。
たとえば、糖尿病のコントロール以前に、
「服薬を忘れてしまう」「独居で食事が偏る」「介護する家族が疲弊している」など様々状況があり、複数や複雑な場合も多々あります。
ここでは、疾患の知識だけでなく、“生活を整える力”や“関係を築く力”も問われます。つまり、「深さ」だけでなく「広さ」も必要になってくるのです。
ゼネラリストとは「支える人」
ゼネラリストとは、何でも屋ではなく、複数の領域を横断し、全体を見渡しながら最適な判断と調整ができる人を指します。
医療・介護・福祉・家族・地域・社会といった多層的で複雑な課題を、一人の利用者の“人生”という視点で統合して捉え「支える」存在です。
訪問看護師や訪問セラピストは、医療と生活のはざまで最も“俯瞰力”を磨ける職種です。
たとえば、複数の慢性疾患を抱える利用者に対して、医師の治療方針を理解しつつ、生活リズムや家族の心理も踏まえて支援を組み立てる…
そこに必要なのは、知識の広さと関係構築力、そして倫理的判断です。
「横断的知性」がキャリアを切り拓く
これからの在宅医療職に求められるのは、診療科別、疾患別や医療技術の専門性だけでなく、「横断的知性(Transversal Intelligence)」だと思います。
横断的知性は、異なる分野や立場や関係性を横断して理解し、統合的に捉え関係を構築する能力です。この能力は、まさにゼネラリストの中核をなす知性といえます。
横断的知性を育む要素は、メタ認知やシステム思考、学際的学習力などがあります。メティスでは、ラダーを通して横断的知性を理解し、育めるように仕組み作りを行い、適宜ブラッシュアップを行っています。
スペシャリストを超えて、「人を理解するプロフェッショナル」へ
訪問看護は、医療職のゼネラリスト化を最も体現しているフィールドです。
医療・介護・福祉・家族・地域・社会のすべてを横断的に見て、支援を行う存在です。しかも、利用者一人ひとりの“生きる”を支え、寄り添うという高い倫理性が求められます。
この経験を積んだ看護師は、
マネージャーや教育者、経営者、政策提言者など、次のキャリアにも展開できる“汎用性の高い人材”となると思います。これからの在宅医療のキャリアは、「専門分野を極める」ではなく、「人を深く理解し、つなぐ力を持つ」方向にますます進んでいくでしょう。
スペシャリストとして培った知識を「点」とすれば、ゼネラリストはそれを「線」にして、人や社会をつなげていく存在です。訪問看護という現場には、その変化を先取りするヒントが詰まっています。是非、在宅医療のフィールドで、知識や経験の幅を広げて「人を理解するプロフェッショナル」を目指して欲しいと思います。




